本人以外でも代理で不動産の売却が出来る?代理で売却の手続きをする方法をご紹介
不動産を売りたいと考えた時、実務手続きを自分以外の誰かにお願いすることができます。
【目次】
忙しくて時間が取れない、遠方にいるため物件がある地域の不動産業者と会えない、あるいは共有状態の不動産売却で代表者に手続きを任せたいといった時などは、代理で手続きをお願いすることも可能です。本章では不動産の売却手続きを本人以外に任せる方法について見ていきます。
委任による代理売却
不動産の取引では所有者に売却の意思があることを確認する必要があります。所有者本人が手続きをする場合は不動産業者との面会時に売却意思の確認ができますが、代理の場合はそうはいきません。
一例として、共有状態となっている不動産について、代表者が売却手続きを進める場合を想定します。共有不動産は所有者全員の同意を示す必要があることを念頭に、兄弟二人の共有状態の物件について、兄が弟分も代理して売却したいケースを仮定しましょう。
この場合、弟は「委任状」を作成し、共有持ち分権者として売却の意思があり、その手続きを兄に委任する旨の委任状を作成します。また弟の印鑑証明や住民票を委任状に添付して本人性の表示も確保します。兄はこの委任状を提示することで、弟を代理して売却の意思を示すことができ、売却手続きを進めることができます。
ただし、近年は正当な権利がないのに虚偽表示を画策して、不当に他人の不動産を売ってしまうような事件も起きています。そのため委任状があったとしても、一度は委任者(上記で言えば弟)と面会して売却の意思を確認したり、それが難しければ電話や手紙で確認するなどしてリスク回避を考える不動産業者が多いです。委任者が忙しくて不動産業者の事務所に出向けない場合なども、必要に応じて不動産業者の担当者が本人の自宅を訪れるなどして確認ができるので、可能な範囲で協力してあげてください。
【委任で取引される事例】
・遠方にある不動産で取引が困難な場合
・海外に住んでいて手続きが自身で行えない場合
・高齢の為に移動が難しい場合
・身体的な事情で移動が難しい場合
・共有不動産で代表者を決めて取引する場合
・時間がとれず手続きが行えない場合 など
委任で代理人となる場合
委任する代理人は複数の種類がありますので主だった内容をご紹介します。
①法定代理人
法律に基づいて選出される代理人となります。未成年の場合や成年後見制度を利用している場合など自身では判断が出来ないとされるケースでは法定代理人に委任することになります。
法定代理人は自分で選出するわけではないので、全ての権限を委任するといったことは出来ません。法定代理人もその内容によって行えることが変わりますので注意しましょう。
②任意代理人
任意代理人は自身で選択することが可能で、どこまでの範囲を委任するかも自身で決定することができ、不動産の売却で多いのは任意代理人のケースとなります。自身で選出することが出来ますが、見極めることが必要で詐欺の被害にあったり意思の疎通が出来ない人を選ぶとトラブルの原因となるので注意が必要です。
委任する場合の代理権の範囲を決めておく
代理で売却をしようとする場合、委任状を作成するようになりますがどこまでの権限を委任するか考えなければなりません。一番は全ての取引の権限を委任することが手続き的にも楽な方法となりますが、委任者と受任者の間で意見がまとまっていない場合、どちらかの認識違いなどがあるとトラブルのもとになる可能性が出てきます。
売買に関しては委任者と受任者との間で売買価格に間違いがないかは非常に重要であり、細かい部分では手付金の授受や固定資産税等の精算がなども発生する為、委任者も売買の流れを知っておく必要があります。その為、委任する場合には委任状に委任する内容をしっかりと記載することでトラブル回避にもつながります。
委任状にはどのような項目が記載されるか
委任状を作成する際は「〇〇に委任します」という内容だけでは不十分となります。不動産の手続きの場合には不動産の表示や付与する権限などを指定する必要があります。委任状に記載すべき最低限の内容をご紹介します。
【委任状の記載内容】
・代理人に委任するという内容
委任者:氏名、住所、実印による捺印
・代理人の氏名、氏名
・土地:地番、地目、地積などの情報
・建物:所在、家屋番号、種類、構造、床面積などの記載
・委任する権限の内容
売却価格の決定、手付金の額及び授受、引き渡し予定日、登記申請手続きなど
・委任状の有効期間
この他にも記載が必要な内容がある場合には明記するようにしましょう。
委任状での売却で必要となる書類
委任での売却を行おうとする場合、委任者と受任者はそれぞれ用意する書類があります。
委任者の必要書類
・印鑑証明書(発行より3ケ月以内)
・実印
・住民票
受任者の必要書類
・印鑑証明書(発行より3ケ月以内)
・実印
・本人確認資料(官公署が発行する顔写真付きの証明書)
・運転免許証
・マイナンバーカード
・パスポート など
委任での売却を検討されている方は受任者の方にも用意する書類があることを伝える必要があります。
委任状による契約では司法書士の確認もある
不動産の取引ではなりすましでの取引を行おうとするものもいて、度々ニュースなどでも取り上げられることがあります。不動産の登記は司法書士が行うことが多いことから、司法書士は入念に本人確認や委任者が正常に判断出来るかなどを確認します。その為、スムーズに取引を進める為には事前に司法書士が決めておくと良いでしょう。
委任による代理ができない場合
委任状を使った不動産の代理売却は、委任者が正常な意思表示ができる状態でなければ取れない方法です。権限を自分以外の誰かに委任するという行為は、大きな不利益を被る可能性のある法律行為となります。
例えば認知症などで判断能力が低下した人は、権限を委任することで自分にどんな不利益がもたらされるのか必ずしも正しく理解できません。そのため判断能力が低下した人は、委任状によって自分の不動産売却を他人に委任することができないルールになっています。
この場合、成年後見制度を利用して成年後見人を設定することも考えなければいけません。成年後見人が設定されただけではダメで、成年被後見人にとって不動産を売ることが必要であることの説明を家庭裁判所で行い、不動産売却を認めてもらう必要があります。
ただ、成年後見制度は利用勝手が悪く、専門家も積極的な利用を進めないことが多いです。例えば成年後見人が誰になるかは家庭裁判所が決定するため、親族以外の弁護士などが付くことも多いです。そうすると認知症の本人が死亡するまで永遠と報酬の支払いが必要になるなど、大きな不利益を被る可能性があります。
親の不動産は親が元気なうちに売ること
今回は代理によって不動産を売る方法を見てきましたが、委任者が正常な判断ができる状態であれば委任状を作り売却手続きを任せることができます。共有不動産の場合や、親が所有する不動産であっても親の判断能力が正常であればこの方法で売却が可能です。
しかし委任者の判断能力が落ちるとこの方法は使えなくなるので、高齢の親の不動産は本人がまだ元気なうちに売却を考えましょう。
不動産を早めに処分するなら不動産買取
不動産の仲介でも売却は可能となりますが、売れる時期が確定出来ない為、思いがけず長期化するケースもあります。また、仲介での売却は買い手を個人の方を想定している為、契約の際は基本的に買い手と相対することが一般的となります。
一方、買取の場合は売却までの期間が短く、早ければ1週間程で不動産を現金化することが出来ます。
不動産買取では買い手が不動産会社となりますので一般の方よりも柔軟に動くことが可能となります。その為、ご事情によっては売却委任をしなくても不動産会社が自宅へ訪問して手続きをして取引が出来ることもあります。
また、不動産の買取の場合でも委任状を作成して続きを進め、売却をすることが出来ます。
手続きを早めに済ませたいなどのご希望がある場合、まずは不動産会社へご相談いただくことをおすすめします。
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記事監修者 かながわ行政書士事務所 代表 池田 晴香
行政書士
かながわ行政書士事務所ホームページ:https://kanagawa-gyosei.com/
WEB制作会社に営業として勤務後、学生時代から就職後も続けていた音楽関係の仕事をきっかけに
ラジオパーソナリティー、ナレーション、朗読などの声の仕事を始める。 30代、行政書士の仕事をスタート。
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