空き家をそのままにすると固定資産税が6倍!?放置は危険!特定空き家について知る
相続した使用しない空き家物件でも固定資産税等の税金が課せられます。
「特定空き家」に指定されると固定資産税が跳ね上がってしまうこともあります。
本章ではこの問題を取り上げたいと思います。
特定空き家とは?
近年、我が国では放置された空き家が増加して問題になっています。
様々な危険を生じさせる空き家については、その所有者に責任を取らせるというのが国の基本スタンスです。
国は2016年に「空家等対策の推進に関する特別措置法(以下、空き家法)」を制定し、保安上、衛生上、景観上その他周辺の生活環境保全に悪い影響を与える空き家について、地元自治体が「特定空き家」に指定することができるようになりました。
特定空き家に指定されると、その所有者は周辺への悪影響が出ないように状況を改善するよう、自治体から求められます。
最初は「助言・指導」から始まりますが、所有者が状況を改めないと「勧告」→「命令」→「行政代執行」と進みます。
最終的な行政代執行では勝手に建物が取り壊され、その費用を後から請求されることになります。
「助言・指導」・・・修繕などが必要な場合はその旨の助言・指導
「勧告」・・・小規模住宅用地からの除外・特例が外れる為、固定資産税が上がる。
「命令」・・・取壊しや是正の命令。違反の場合、最大50万円以下の罰金。
「行政代執行」・・・行政が強制的に取壊しなどを行う。
それも問題ですが、かなり手前の措置「勧告」をされた時点で、「住宅用地特例」の対象から外されてしまい、固定資産税や都市計画税の負担が増してしまうので、この点が大きなリスクになります。
固定資産税は1月1日に、土地、家屋を所有している人に課せられる税金のことです。
都市計画税は、1月1日に都市計画法による都市計画区域のうち、市街化区域内にある土地と家屋を所有している人に課せられる税金です。
つまり一般住宅地内にある土地、家屋の所有者には固定資産税と都市計画税の負担があります。居住用・非居住用(空き家)に関わらず不動産を所有することにより、固定資産税および都市計画税が課せられます。
住宅を建てるための土地は、固定資産税評価額の算定において軽減措置が講じられています。
固定資産税については、200㎡までは評価額が六分の一に、200㎡を超える部分については三分の一にまで軽減されます。
都市計画税にも適用があり、こちらは200㎡までは評価額が三分の一、200㎡を超える部分については三分の二に軽減されます。
単純計算で評価額が最大6倍になるということですが、あくまで評価額が上がるということですので、税金の額としては必ずしも6倍になるとは限りません。(本文に対する出典: 国土交通省・空家等対策特別措置法について)
いずれにしても、上記勧告を受けた段階でこの軽減措置の適用がなくなる分、税負担が増すことになり、これが所有者に対してのプレッシャーとして機能することになります。
こうならないための対策について、次の項から見ていきます。
「空家等」・・・国や地方公共団体が所有・管理していない建築物又はこれに附属する工作物。居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの。「特定空家等」とは以下の空き家のことを指します。
① 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
② 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③ 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
④ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
(参考文献:国土交通省「空き家対策について」)
特定空家等に対する措置状況
周辺の生活環境等に悪影響を及ぼす「特定空家等」について、助言・指導、勧告等の措置の件数は年々増えており、平成30年度末までに市区町村長が助言・指導15,586件を行ったもののうち、勧告を行ったものは922 件、命令を行ったものは111 件、代執行(行政代執行と略式代執行)を行ったものは165 件となっています。
(参考文献:国土交通省「空家法の施行から4年、各地で空き家対策の取組が進む」)
空き家件数は年々増加しているのでそれに伴い特定空き家の件数も今後増加されることが予想されます。
特定空き家に指定される前に売る
特定空き家は、建物が相当傷んで倒壊など各種の危険が生じるような場合に指定されます。
相続した空き家を放置すると朽ちるスピードが非常に早まるので、傷みが進む前に早く売ってしまうのが最も有効な手立てです。
傷みが進む前であれば、市場で買い手がつく可能性はあるでしょう。
しかし、すでにある程度傷んでしまった家屋は需要がないので、市場で買い手がつかないかもしれません。
そのままではいずれ特定空き家に指定されてしまい、所有者としての責任を問われることになるので、別の手立てを考えなければなりません。
空き家を放置するリスク
① 建物の老朽化・・・利用されていない建物は通常よりも早く劣化し、その分資産価値が下がります。
② 犯罪に利用される・・・誰も住んでいないなことが分かる為、不審者の利用や放火などに利用されやすくなります。
③ 近隣へのリスク・・・老朽化した建物が倒壊して近隣の人や建物にケガや傷をつけてしまった場合、治療費など負担もしくは損害賠償になる可能性が
あります。
④ 景観が悪くなる・・・建物の老朽化、敷地の草木のメンテナンスが悪くなると景観が悪くなり、周辺へ悪影響を及ぼします。
直接買い取り方式で売る
不動産の売却方法には、市場で買い手を見つける通常の売却方法だけでなく、不動産業者に直接買い取ってもらう買い取り方式もあります。
古い物件やある程度傷んでしまった物件でも、プロの不動産業者は必要な改修を行って利益を出せる物件に生まれ変わらせることができます。
市場で売るよりは買取金額が安くなりますが、改修費を考えれば仕方がありません。
もし建物の傷みが激しく、プロの業者による改修を行っても利用できないようであれば、建物を解体して土地を買い取ってもらうこともできます。
売れにくい不動産を相続してしまっても、あきらめずに直接買い取りの方法で売ることができないか検討してください。
『被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例』の利用売却した際に譲渡所得税が出た場合、最大3000万円まで特別控除を受けられ、利益が3000万円以下だった場合、利用条件を満たせば譲渡所得税を支払う必要がなくなります。
仮に3000万円以上の利益が場合でも、3000万円を引いた額に税金の部分が課税対象となるので軽減が出来るようになります。
(関連記事:『居住用財産の3000万円特別控除』)
まとめ
実家を相続してしまうと空き家となってしまう傾向があります。しかし、この段階では税金が高くなることはありません。しかし、放置をし続けていると特定空き家に指定されてしまう危険があります。
思い出のある不動産を負の財産にしないためにも、相続した場合には早めに対処されることをおすすめします。
(関連記事:空き家の問題は所有者に責任が!売りたくても売れない空き家はどうする?)
(関連記事:相続した空き家は売却出来る!売却の流れをつかんで困らず確実に売る)
記事監修者 かながわ行政書士事務所 代表 池田 晴香
行政書士
かながわ行政書士事務所ホームページ:https://kanagawa-gyosei.com/
WEB制作会社に営業として勤務後、学生時代から就職後も続けていた音楽関係の仕事をきっかけに
ラジオパーソナリティー、ナレーション、朗読などの声の仕事を始める。 30代、行政書士の仕事をスタート。
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