不動産買取は損をする?仲介と比較して損をしない売却をする
不動産買取は総合的にみると仲介による売却と比べて必ずしも損というわけではありません。
本章ではこの点を深掘りして見ていきます。
【目次】
不動産業者に直接買い取ってもらう「買取」は、短期間で確実に不動産を売却できる利点があるので、急ぎのケースで重宝されます。
反面、仲介による売却よりも売値が安くなる点がデメリットとして挙げられることも多いですね。
損か得かは物件の売却価格だけで判断できない
売却対象の物件の買取値段だけを見れば、仲介による売却価格とくらべるとどうしても値が下がることは否めません。
買い手となる不動産業者も、転売利益を出したり利活用のために修繕などの出費を考えなくてはならないからです。
売主としては損をせず、なるべく高く売りたいという希望が多いでしょう。
しかしその点だけにクローズアップするのではなく、広い視点で見ると仲介と買取で大きな差が出ないことも多いのです。
買取では仲介の場合にかかる諸経費を浮かすことができるので、総合的に見れば仲介と比べても損がない、ケースによってはむしろ得になる結果となることもあるのです。
次の項では、仲介による売却でどんな諸経費がかかってくるのか見てみましょう。
自宅を仲介で売る際の諸経費
自宅を仲介で売却をする際にはさまざまな費用が発生してきますが、どのような諸経費がかかるのでしょうか。
①仲介手数料
仲介手数料は不動産業者への成功報酬として必ずかかります。
例えば物件が3000万円で売れれば、仲介手数料は96万円+消費税というかなり大きな額になります。
仲介手数料に関しては取引価格によって金額が異なり、高い価格での取引になるほど手数料も高額となる傾向にあります。
その為、売却の際はこの手数料を視野に入れておく必要があります。
【仲介手数料の豆知識】
売買代金 | 媒介報酬(仲介手数料) |
200万円以下の部分 | 取引物件価格(税抜)×5%+消費税 |
200万円を超え400万円以下の部分 | 取引物件価格(税抜)×4%+消費税 |
400万円を超える部分 | 取引物件価格(税抜)×3%+消費税 |
また、仲介手数料の計算では速算式の利用が可能です。一般的な手数料の計算はこの計算式にて行われます。
速算式 |
(売買価格×3%+6万)×消費税 |
上記の速算式をもとにして仲介手数料の事例を確認してみましょう。
例)売買価格別の上限となる仲介手数料(消費税税率10%の場合)
取引金額 | 仲介手数料額 |
1,000万円の物件 | 396,000円(税込) |
2,000万円の物件 | 726,000円(税込) |
5,000万円の物件 | 1,716,000円(税込) |
1億円の物件 | 3,366,000円(税込) |
不動産の取引では仲介手数料の上限額は一律とはなっていませので、取引の際は注意しましょう。
②リフォームやハウスクリーニング費用
汚れた壁紙の張替えなど必要最低限のリフォームや、嫌悪感を持たれないための最低限のハウスクリーニングは必要で、古い物件だと数十万円程度かかることもあります。
リフォームをしない状態でも売却は可能となりますが、あまりにも劣化している場合などは印象が悪くなりますので、売りにくくなるかも知れません。
あまりに室内などの状況が悪い場合には、買い手がリフォームを行う費用を想定してその分を値引きの交渉の対象となることがあります。
またリフォームをしようとした場合、賃貸ではリフォーム後に賃貸として貸し出す為、稼働した分収益を得ることが出来るので、リフォーム費用を回収することは出来るでしょう。
しかし、売却の場合にはリフォームをするのはあくまで売りやすくする為であって、リフォーム代を上乗せしさらに利益を出そうとすると販売をする価格が近隣の相場や競合をする物件よりも高くなってしまうので売れないケースが出てきます。
売れない場合、価格を見直すこととなるので結果的ににリフォームにかけた費用を損してしまうこともあります。
③仮住まい先への引越し費用、賃借料
不動産の売却をする際には事前に引越をし、空室となっていたほうが買い手がゆっくりと室内の内見や判断が出来るので良い場合があります。
しかし、売却が決まるまでの間に仮住まいを確保すれば、引っ越し費用や敷金、礼金、賃借料の他、仲介業者への手数料などもかかります。
これらを合わせればやはり数十万円はかかるでしょう。
また、転勤などの場合には空室として売却されることが多くなりますが、転居先の賃料とマイホームの住宅ローンの二重の支払いがあることも考慮が必要です。
④契約不適合責任のリスクが生じる
仲介では買い手も不動産の取引経験の少ない素人の方が大半ですから通常は契約不適合責任を免除してくれません。
取引後に物件に不都合が見つかった場合、売主がその責任を負う可能性があり、契約書上に記載の無い不具合については売主が補修、修復や改善をする必要があります。
契約不適合責任では状況によっては損害賠償の請求をされたり、契約の解除ということも想定されるので注意をしなければなりません。
もし補修や修復をする場合には住宅設備類は割と高額になるケースがあるので、築年数が古い物件やもとより不具合が多い物件に関しては売主が知り得ない不具合が生じる可能性があることも考えておかなければなりません。
その為、仲介では売れたからといって手放しでは喜べない状況もあり、結果的に損してしまうケースもあります。
買取では買主がプロの不動産業者ですので、売主の契約不適合責任を免除してもらうことが可能です。
【契約不適合責任につていの詳細はこちらをご確認ください】
『民法改正された「契約不適合責任」とは。瑕疵がある訳あり物件の契約での「契約不適合責任」を不動産のプロが解説』
⑤売却成功までの管理費用
売却が実現するまでの間、税金や住宅のメンテナンスにかかる費用は売り主が負担しなければなりません。
ケースによっては売却成功まで1年以上かかることもあるので、その間の管理にかかる経費も大きくなります。
早期に売却を予定している場合、余計な費用がかかってしまう為、損をしたと思われる方もいるかもしれません。
お金に換えられない利益も
買取による売却は、金銭的なものでなくても売主に都合のよいメリットがいくつかあります。
例えば仲介による売却では必ず希望者から内見の依頼が入ります。
中には買う気はないけど一応見るだけ見ておくという見込みのない客もいますが、それでも案内しないわけにはいきません。
不特定多数の人がしょっちゅう出入りして我が家を物色するわけですから、現住のまま売るケースでは心身ともに負担が大きくなります。
買い手に内見をしてもらう為に立ち会いをするスケジュールを合わせたり、対応する時間を考えると時間的に損しているとも言えるでしょう。
またご近所の目もあるので、あらぬ噂を立てられるなど不都合が生じることもあります。
仮住まいを確保して売却に臨むのであればこうした負担はありませんが、上で見たように引っ越し代や賃料などの負担が大きくなり、その費用分を損してしまいます。
買取した場合の費用
不動産を買取してもらう場合には費用が発生するケースもあります。
まず買取業者へ直接買取を依頼する場合、買取業者が買主となる為、仲介手数料が不要となります。
しかし、不動産会社を介して買取業者で買取をしてもらう場合、買主が前述した直接買取をしてもらう業者と同じ買取業者でも仲介となってしまう為に、仲介手数料が必要となります。
その為、同じ買取でも取引の仕方が異なる為、買取での恩恵を受けられず損してしまうこととなります。
取引価格によっては100万円以上も余計に支払うこととなりますので注意しましょう。
買取と仲介の費用比較
不動産を売却する際は以下のような費用が必要となります。
(1)仲介手数料
仲介手数料は仲介の場合は支払いがありますが、直接買取の場合は不要となります。
計算方法については前述しておりますのでそちらをご参照ください。
(2)印紙税(売買契約書に課税)
売買契約を締結した場合、契約書には収入印紙を貼付するようになります。
取引をする価格によって印紙税の金額も変わってきます。
印紙を貼付し割印などで消印をすることにより納税をしたと見なされます。
現在は2022年3月31日まで軽減措置が適用されています。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
(参照:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」)
(3)登記費用(抵当権抹消などの費用、司法書士への報酬の支払い)
売却の際にも住宅ローンがある場合や登記している住所などに相違がある場合には登記費用が必要となります。
この登記費用は住宅ローンが無くなったことを証明する抹消登記というもので、所有権の移転をする為に必要な手続きとなります。
住宅ローンは抹消の費用が必要となり、一般的には報酬を含めて3万円~5万円ほどが相場となることが多くなります。
(4)測量費、建物の解体費、残地物・廃棄物の処分費など
取引の状況によっては土地の測量や既存の建物を取り壊した後に引渡となるケースがあります。
また、残置物や廃棄物がある場合には事前に撤去する必要があります。
買取の場合には残置物などの処分は相談出来ることがあります。
【買取と仲介の費用の比較】
買取(直接の買取) | 仲介 | |
仲介手数料 | 不要 | 必要 |
印紙税 | 必要 | 必要 |
登記費用 | 必要 | 必要 |
測量費、解体費 | 状況により必要 | 状況により必要 |
残置物 | 相談可 | 処分必須 |
仲介と買取の費用の比較
実際に仲介での取引と買取での取引とではどのように費用に差があるのでしょうか。
事例を用いて説明していきます。
【4,000万円の戸建ての取引の場合】
●仲介の場合
買取価格 | 40,000,000円 |
仲介手数料 | 1,386,000円 |
契約印紙代 | 10,000円 |
抹消登記費用 | 50,000円 |
残置物処分費 | 300,000円 |
手取り金額 | 38,254,000円 |
●買取の場合
買取価格 | 36,000,000円 |
仲介手数料 | 不要 |
契約印紙代 | 10,000円 |
抹消登記費用 | 50,000円 |
残置物処分費 | 業者で処分 |
手取り金額 | 35,940,000円 |
上記の金額を比べた場合、買取では金額が低くなってしまうことがありますので買取は損をするということを言われる要因となっています。
しかし、契約不適合責任などの売主が負う責任が仲介の場合では発生することがあり、大掛かりな修繕を伴う場合にはトータルの金額は仲介のほうが減ってしまう場合も出てきてしまいます。
築年数の比較的新しい物件に関してはリスクは低くなりますが、築年数の古い物件に関しては売主が気づかずに申告していない不具合が生じることもあります。
その為、物件や状況によっては仲介か買取かを選択することで損なく物件を売却出来るようになります。
総合的にみると意外と大差はないことも多い
このように、ケースにもよりますが不動産売却を総合的な目線でみれば、様々な諸経費が掛かる仲介よりも、買取で売却した方が余計な経費がかからず、リスクも抑えた上で出費に関しては大きな差が出ないことも多いです。
特に、築古物件や駅から遠いなどで人気が薄いことが最初から分かっている場合、売れ残りリスクを考えると初めから買取一択で進めた方が結果的に損をせずにお得になることもあります。
物件価格だけに視点をあてるのではなく、諸経費のことも考えて仲介と買取どちらの方が都合が良いか考えてみましょう。
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『不動産買取とは|買取と仲介を理解して賢く売る方法』
記事監修者 かながわ行政書士事務所 代表 池田 晴香
行政書士
かながわ行政書士事務所ホームページ:https://kanagawa-gyosei.com/
WEB制作会社に営業として勤務後、学生時代から就職後も続けていた音楽関係の仕事をきっかけに
ラジオパーソナリティー、ナレーション、朗読などの声の仕事を始める。 30代、行政書士の仕事をスタート。
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