【2021年税制改正】教育資金の一括贈与非課税措置の見直しと延長
本記事では2021年税制改にかかる教育資金の一括贈与非課税措置の改正点についてポイント解説を行います。
【目次】
教育資金の一括贈与非課税措置の見直しと延長
本特例では、親や祖父母など直系尊属が30歳未満の子や孫など下の世代に教育資金を贈与した場合、最大1500万円まで贈与税が非課税になります。
本特例の改正ポイントは以下の通りです。
①期間の延長
本特例は令和3年3月31までの時限措置でしたが、令和5年3月31日まで適用期間が延長されます。2年延長されたことにより、この期間内に教育資金を受取り、一定の要件を満たす場合には贈与税が非課税となります。
②相続税課税対象となる残余財産の拡大
贈与者死亡時の残余財産の扱いが変わり、これまでは贈与者が死亡する前の3年以内になされた贈与についてのみ相続税の対象になっていたところ、この年数制限がなくなり、原則として残余財産全てが相続税の課税対象にされます。
ただし受贈者が以下のいずれかに該当する場合は相続税の課税対象から外されます。
・23歳未満である場合
・学校等に在学している場合
・教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合
③相続税2割加算の適用
相続税の基本ルールとして、相続人とならない孫やひ孫は相続税が2割加算される仕組みがあります。
改正前の教育資金贈与では相続人とならない孫やひ孫の相続税課税の2割加算の適用はありませんでしたが、改正後は通常ルールと同じく相続税2割加算の対象になります。
上記②の改正点と合わせて、贈与者死亡時には教育資金の残余財産全てが相続税の対象となり、加えて税額2割加算の対象となるので、孫やひ孫への教育資金贈与については特例の利点がかなり削られる印象です。
教育資金の一括贈与非課税措置の適用要件
この特例を利用する場合には適用要件があります。
30歳未満の方が、教育資金に充てるため、金融機関等との一定の契約に基づき、直系尊属父母や祖父母などから以下のような贈与を受ける必要があります。
①信託受益権を取得した場合
②書面による贈与で取得した金銭を銀行等に預け入れをした場合
③書面による贈与で取得した金銭等で証券会社等で有価証券を購入した場合
(取扱金融機関の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出する)
また、前年の合計所得金額が1,000 万円以下でなければ適用が出来ない為、社会人の方などは注意が必要です。
教育資金とはどのようなものか
この特例で定められている教育資金とはどのようなものがあるのでしょうか。
学校等に対して直接支払われる金銭
・入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費又は入学(園)試験の検定料など
・学用品の購入費、修学旅行費や学校給食費など学校等における教育に伴って必要な費用など
学校等以外の者に対して直接支払われる金銭
・教育(学習塾、そろばんなど)に関する費用など
・スポーツまたは文化芸術に関する活動など
・指導で使用する物品の購入に要する金銭
それ以外に支払いが認められるもの
・学校教育に充てるための金銭で、学校等が必要と認めたもの
・通学定期券代、留学のための渡航費などの交通費
教育資金の一括贈与非課税措置を受ける為の注意事項
この非課税制度の適用を受けるためには、教育資金口座の開設等を行った上で、教育資金非課税申告書をその口座の開設等を行った金融機関等の営業所等を経由して、信託や預入などする日までに、受贈者の納税地の所轄税務署長に提出等をしなければなりません。その為、現金で贈与したり、上記以外の口座や方法で贈与を行う場合にはこの制度を適用することが出来なくなります。
また、この制度はあくまで教育資金の贈与という内容となっている為、教育資金以外の用途での利用は出来ないので注意しましょう。
教育資金の一括贈与非課税措置を受けるタイミング
この制度では贈与を受ける受贈者が30歳になると終了してしまう為、終了時点で残高が残るようなことがあると相続税の対象となってしまいます。
その為、幼少期から贈与を受ける場合には課税されるリスクは低くなりますが、高校生や大学生といった年代の場合にはどれほどの費用がかかるかなどあらかじめ確認をしておく必要があります。
相続時の節税にも効果がある
相続時に資産や不動産が多くある場合には相続税が多く課税されることになります。この制度は上手く利用することで、その贈与額は相続財産から除外されるため節税効果が期待できます。しかし、残額が残る場合には相続税の対象となるので注意しましょう。
また所有者が高齢な場合、状況によっては自身で判断が出来なくなってしまうケースもあります。自身で判断が出来ない場合には財産や不動産の処分も自身の意思では行えなくなることもあるので事前に話し合いを行い、どのように資産を利用するかを考えておく必要があります。
まとめ
教育資金の一括贈与非課税措置の制度では一度利用をすると他の用途に資金を利用したい場合でも資金を返還してもらうことが出来なくなります。この制度を利用するにあたっては教育資金がどのくらい必要になるかなど事前に打ち合わせを行い、決定する必要があります。上手く利用することで節税にもつながりますので事前に確認をした上で利用すると良いでしょう。
(参考:国税庁「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税度のあらまし」)
(参照:国税庁「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」)
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記事監修者 かながわ行政書士事務所 代表 池田 晴香
行政書士
かながわ行政書士事務所ホームページ:https://kanagawa-gyosei.com/
WEB制作会社に営業として勤務後、学生時代から就職後も続けていた音楽関係の仕事をきっかけに
ラジオパーソナリティー、ナレーション、朗読などの声の仕事を始める。 30代、行政書士の仕事をスタート。
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