路線価が6年ぶりに下落 不動産へはどのように影響するか
毎年の恒例となっている国税庁による路線価発表が先ごろなされ、国全体として下落傾向が強くでる結果となりました。
本章では路線価下落と不動産への影響を考えてみましょう。
路線価とは
路線価とは国税庁が定めた土地の価格で、主要な道路の1㎡当たりの土地価格を公示しています。土地の価格は情勢によって変動し決まった価格が無い為、公正に税額や価格を決められるように公示されています。路線価は相続や贈与が発生した際にも相続税や贈与税の計算に活用されています。
路線価の価格は国税庁のサイトより確認することが出来ます。
全体として6年ぶりの下落に
今年はコロナの影響が強く出た形で、特に人出が少なくなった繁華街などがもろに影響を受けました。また、海外からの外国人旅行客が減少しインバウンド(訪日外国客)需要も低迷したことから観光地などの下落が見られています。
数字的には全国平均の変動率が去年と比べて0.5%下回る結果となっています。前年比で全国平均が下回るのは6年ぶりですので、コロナの影響が去年よりも強く出たと解釈することができます。
上昇は7道県のみ
路線価が上昇したのはわずか7道県のみで、上昇率の高い順に福岡、沖縄、宮城などが続きます。ただしこれらの地域も前年と比べると上昇率は縮小していて、やはり国全体で土地が生み出す経済的なパワーが落ち込んでいると理解できます。
2021年9月22日現在、緊急事態宣言やまん延防止等措置が講じられている地域の制限を月末頃に全面撤廃できないか検討されているようですので、実現すれば経済活性が盛り返し、土地の市場価値が上昇する可能性があります。ただしそうなると、土地の市場価値と路線価に乖離が生じるので、この点が注目されます。
路線価=市場価値ではないことに留意
土地の価値は複数あるとされており、路線価はその一つですが市場価値とは別物であることに留意が必要です。路線価は一般取り引きの指標に用いられることもありますが、元々は相続税や贈与税などを課税するための、国目線で設けられている指標です。
路線価は市場価値のおよそ80%程度になるように設定されますが、不動産の市場価値は常に変動するので、いつも市場価値の80%を維持しているわけではありません。特にコロナの影響がある中では、市場価値の変動が予想されます。
もし土地の市場価値が今以上に下がれば、相続や贈与の場面ではこれに比して割高に設定されている路線価により評価されることになります。そのため市場価値と路線価に大きな乖離が生じた場合には、国税庁が路線価に補正を入れることもあります。
過去にも補正が入った例があり、今回も大きな乖離が生じたと判断すれば同様の措置が取られる可能性があります。逆に土地の市場価値が上がった場合、割安となる路線価が補正されて上昇するということも考えられます。
贈与するなら有利なタイミングで
仮に土地の市場価値が上がり、その後路線価も補正されて上昇した場合、相続と贈与の面では不利になります。相続は時期をコントロールできないので仕方がないとして、贈与を考える場合は路線価が低い時期に実施した方が贈与税は安く済みます。
ねらい目を見極めるとすれば、路線価が下がった時期、そしてコロナが収束して路線価が上昇する前のタイミングです。来年以降コロナの影響が収束に向かうと考える場合は、路線価が低い今のうちに贈与を考えるのが有利かもしれません。
ただし土地も含めて資産運用を考える時には、贈与税だけでなく全体を見て判断する必要があります。
記事監修者 かながわ行政書士事務所 代表 池田 晴香
行政書士
かながわ行政書士事務所ホームページ:https://kanagawa-gyosei.com/
WEB制作会社に営業として勤務後、学生時代から就職後も続けていた音楽関係の仕事をきっかけに
ラジオパーソナリティー、ナレーション、朗読などの声の仕事を始める。 30代、行政書士の仕事をスタート。
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