放置しておくと危険!相続税の仕組みを不動産のプロがお教えします
相続の手続きでは「相続税」の問題が発生します。
相続の流れや相続税について、不動産のプロが詳しくご紹介していきます。
【目次】
不動産相続の流れ
相続税についてご説明する前に、まずは相続が発生した後の流れをご紹介します。
不動産の相続の流れは、以下のような流れが一般的です。
- 相続の発生
- 遺言書の確認
- 相続人の確定
- 遺産分割協議
- 相続登記
相続が発生したら、第一に遺言書の有無を確認しましょう。
まずは相続人の決め方についてご説明します。
相続人を決めよう|遺言と遺産分割協議
不動産の名義人が亡くなり相続が発生したら、まずは相続人を明らかにする必要があります。
相続人の決め方としては2パターンあり、遺言に従う方法と遺産分割協議を行う方法が一般的です。
「遺言」とは、不動産の名義人による最終の意思表示のこと。自身の死後に、財産の処分等に関して意思表示が出来る唯一の方法とされています。
遺言を遺すことは、相続人同士の争いやもめごとの予防にもなります。
遺言の作成にあたっては、法律上の要件にそった内容でなくては効力が及びませんので注意が必要です。
一方、遺言がない場合や指定されている財産が一部の場合、相続人が複数人いる場合には、
財産をどのように分けるか、相続人全員で決定する必要があります。
このような協議のことを「遺産分割協議」といいます。
また、遺産分割協議が原因でもめごとにならないように、遺産分割協議の際には協議の内容をまとめた「遺産分割協議書」を作成しましょう。
以下に「指定相続」「法定相続」それぞれの方法について詳しくご説明していきます。
遺言による相続人の指定
遺言によって相続人が指定されていることを指定相続といい、指定された人が相続人となります。
遺言書がある場合、遺言書で指定された相続人が遺産を相続することになります。
指定相続の場合に注意したいのは、相続人が指定されている場合にも「法定相続人」が一定の遺産相続権を持っていること。
法定相続人とは、遺言がない場合に遺産相続権を持つことが出来る相続人のことです。
法定相続人の遺産相続権は民法により規定されています。
法定相続人にあたるのは、配偶者や子、父母、兄弟姉妹です。
しかし、遺言書で指定されている相続人は必ずしも法定相続人とは限りません。
もし遺言による指定人の中に法定相続人が含まれていなかった場合、法定相続人は不利益を被ることになってしまいますよね。
そこで、法定相続人にとって不利益な事態を防ぐために「遺留分」の保証が定められています。
遺留分とは?
「遺留分」は各法定相続人に定められた、法定相続人が遺産の一定分を取得することを保証する制度です。
この「遺留分」に関しては、遺言書でも相続人を指定することが出来ません。
遺産分割協議による相続人の指定
もし遺言がない場合は、配偶者、子、父母、兄弟姉妹が法定相続人となり、法定相続を行います。
「法定相続」のより遺産を相談して分ける場合には「遺産分割協議」と呼ばれる相続人同士の話し合いを行う必要があります。
この「遺産分割協議」を行う際は、以下の点に気をつけなくてはいけません。
- 相続人全員が参加して行う
- 協議の結果は「遺産分割協議書」として書類にする
- 未成年者の相続人がいる場合、代理人を立てて参加する
遺産分割協議の際に相続人が一人でも欠けている場合は、その遺産分割協議における決定は無効になりますので注意してくださいね!
また、実際には遺産分割協議書は作成せずとも口頭だけでも成立はします。
しかし、口頭だけでは「合意していない」といった紛争が起こってしまう可能性がある為、それを防ぐために作成するのが一般的です。
また、遺産分割協議書には契約書と証明書としての役割もあります。
- 金融機関の預金口座の手続き
- 株券や車の名義変更手続き
- 不動産の名義変更手続き
- 裁判の証拠として利用出来る
など、諸々の手続きをする為には遺産分割協議書が必要となりますのでやはり作成しておくべきです。
プロが教える!豆知識
遺産分割協議書を作るにあたって
遺産分割協議書の雛型は、インターネットなどで比較的簡単に入手することが出来ます。
しかしどの遺産分割協議書を使っても良いという訳ではなく、それぞれの場合に適した雛型がありますので、使用する際はご注意ください。
遺産分割協議書とは~相続後の争い回避に効果的!書類の目的と作成方法を徹底解説|遺産相続弁護士相談広場
相続登記
さて、ここまで相続発生から遺産の分配までの流れをお話ししました。
相続人と遺産の分配が決まったら、次は相続登記を行う必要があります。
相続登記とは、簡単に言えば「相続の発生に伴い、不動産登記の登録名義人を変更すること」。
相続登記について説明する前に、まずは不動産登記とはどのようなものなのかをご説明しましょう。
不動産登記とは、土地や建物の所在・面積や、所有者の氏名や住所などを登記簿に記載し、
不動産の権利関係などを誰にでもわかるように、登記簿を一般公開したもののことを指します。
不動産登記があれば、仮に土地を自分のものだと言い張る他人が現れたとしても、土地の所有者は自分であると法的に主張することが出来ますよね。
では、ここから本題の相続登記についての説明です。
不動産の所有者が亡くなった際に、不動産の登録名義を亡くなった名義人から相続人に変更することを相続登記といいます。
不動産は相続登記を行うことによって正式に所有者が変更され、その後の取引を安全に、スムーズにしてくれます。
相続登記の重要性
相続登記の手続きには、被相続人・相続人の戸籍謄本や相続人全員の住民票などが必要になります。
登記申請には書類を収集する・作成するという手間がかかることから、司法書士に手続きを依頼するケースが一般的です。
しかし、中には費用や手間がかかるという理由から登記申請をしない人も多く、空き家問題などの社会現象を引き起こす原因となっています。
ですが、不動産を相続した際に相続登記を行うことはとても重要なこと。
もしも相続登記を行わないまま不動産を放置した場合、以下のような問題が発生してしまうのです。
- 相続した不動産を売ることが出来ない
- 相続した不動産を担保として融資を受けることが出来ない
- 相続人が亡くなり、子供が相続した場合、亡くなった相続人の立場を引き継ぐため、合意を取るのに手間がかかる、集める書類がより複雑になる
相続登記を放棄することは所有者不明の不動産といった社会問題の原因となるほか、相続した不動産を売却するときに相当な手間と時間がかかったり、もめごとの原因となる可能性があります。
そのため不動産の相続が発生したら、相続登記は放置せず、なるべく早めに登記申請を終えるようにしましょう。
(関連記事:相続した不動産は現況のまま売れるのか?)
各税の納付
では、実際に相続登記にはどのような費用が必要となるのでしょうか。
相続登記を終えたあとに、節税対策をしておけば良かったと後悔することのないよう、相続登記の際に発生する税金についてしっかり理解しましょう。
相続登記の際に必要となる税金には「誰でも支払う税金」と「人によって支払う税金」の二つに分かれます。
登録免許税、不動産取得後の固定資産税は、誰でも支払う必要のなる税金です。一方で、所得税、相続税、不動産取得税は人によって払う必要がある場合とない場合があります。
登録免許税
登録免許税とは、不動産や会社などの登記や登録に対して課税される税金です。
不動産の場合、不動産の価格に一定の税率をかけて税額を求めます。
登録免許税は登記や登録に対して発生する税金なので、原則相続登記を行おうとするすべての人が納付する必要があります。
相続による所有権の移転登記の場合、税額は土地・建物共に0.4%となります。
例)土地建物の相続登記の場合
土地 固定資産税評価額 7,000,000円
建物 固定資産税評価額 7,500,000円
7,000,000円×0.4% + 7,500,000円×0.4% = 58,000円(登録免許税)
固定資産税
固定資産税は毎年1月1日の時点で土地や建物などの固定資産を所有している人が納める税金です。
所有者が亡くなった場合にはその相続人が義務を継承します。相続人が複数いる場合は、一人を代表者と定めて納税通知書等の送付先を指定することができます。
固定資産税は固定資産税評価額と税率を掛け合わせることによって求めることが出来ます。
固定資産税評価額とは?
固定資産税の基準となる価格を「固定資産税評価額」といいます。
固定資産税評価額が大体いくらになるかは、不動産の購入金額の70%を求めることで把握できます。
しかし固定資産税評価額は地価や建築物の築年数によっても大きく変わるので注意が必要です。
また固定資産税評価額は地価の変動に伴い、三年に一度評価額が見直されます。
所得税
所得税は、個人の所得(収入から必要経費を差し引いた利益のこと)に対して課せられる税金のこと。
不動産を相続したときに、所得税が発生するのではないかと心配される人がいらっしゃいますが、
所得税は、相続によって取得した不動産には原則発生しません。
しかし、中には所得税の納税が必要となる場合もあります。
それは、賃貸物件を相続した場合。
相続した不動産が賃貸物件だった場合は、毎年不動産所得が発生するため、税務署に確定申告を行わなくてはなりません。
確定申告の際に経済的負担が発生することになります。
「不動産所得」とは?
不動産の貸し付けによる不動産収入がある場合に、収入から必要経費を差し引いた金額を「不動産所得」といいます。
不動産を賃貸に出していたり、売却する場合は不動産収入が発生するので、それに伴い不動産所得が発生します。
単に相続によって不動産を取得する場合には、不動産収入、不動産所得は発生しないので
所得税も発生しないということになります。
また、相続後に不動産を売却する場合にも所得税が発生します。
不動産を売却する際に発生する税に関しては「相続税を支払った分不動産売却後に払う譲渡税が減る」の項でも記載しています。
相続税
相続税は、法定相続や指定相続によって不動産を取得したときに、取得した不動産に対して課せられる税金のことです。
相続税は、取得した遺産の総額が一定額を超えると発生します。
では、相続税は遺産の総額がいくらい以上だと発生するのでしょうか?
相続税が発生するのは、遺産の総額が「基礎控除額」より大きいときです。
遺産の総額から「基礎控除額」を差し引いた金額に対し相続税が課せられます。
基礎控除額
3000万×相続人の数×600万
※平成27年1月1日以後の相続について基礎控除額や税率等が変更されました。
つまり、基礎控除額の範囲内なら相続税は発生しないということですね。
上の計算式からわかる通り、相続人が多ければ多いほど控除額は増える仕組みになっています。
不動産取得税
不動産取得税は、原則相続によって不動産を取得した場合には支払う必要のない税金です。
本来、不動産所得税は不動産を所有することに対して、登記の有無に関わらず課せられる税金です。
たとえ一日でも不動産を所有した場合は、不動産取得税を支払わなければいけません。
しかし例外として、相続によって不動産を取得した場合は不動産取得税を払う義務が発生しないんです。
ですが、中には例外の例外もあります。
それは、遺言書によって相続人以外が不動産を相続する場合です。頭に入れておきましょう。
相続した不動産は放置しておくと危険
ここまで、不動産を相続したときの流れや必要となる税金について説明しました。不動産相続について理解を深めて頂けたでしょうか。
中には「こんなに手間やお金が掛かるなら、多少のデメリットがあるとしても相続登記はしなくていいや……」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、前述のとおり相続した不動産の相続登記をせず放置しておくのはとても危険です。
特に、相続した不動産を売却したいと考えている場合は、相続税の滞納に注意してくださいね。
実は、相続税を払った場合と払わなかった場合では売却価格が変わる可能性もあるんです!
相続した不動産を放置しておくことによって生じる問題について、改めてご説明します。
物件を放置すると評価額が下がって売却しにくくなる
不動産は基本的に新しければ新しいほど評価額が高いもの。
相続した後、長年放置した不動産はいざ売却するという時に値段が下がってしまいます。
また、売却する際には傷んでしまった箇所のリフォームが必要です。
相続した不動産の売却を考えている場合には、手続きは後回しにせず、早めに売却の準備をするようにしましょう!
固定資産税の支払いや管理費ばかりかさんでいく
また、相続した不動産を放置していても、固定資産税の支払い義務は発生します。
誰も住んでいない状態で長年放置することにより建築物が痛み、修繕費、管理費や解体費用が発生するなど、経済的に負担になってしまうことがあります。
相続税の特例の効力が切れてしまう可能性がある
実は、不動産を売却する際に、相続税をしっかり納税していれば売却時に発生する譲渡税を減額することが出来るんです。
しかし相続税を支払わなければ、相続税の特例は適用されません。
この相続税の特例については次項で詳しくご説明します。
不動産を売るなら相続税は払っておいたほうが後々得
不動産を相続したものの、結局空き家になってしまいただ所有しているだけの“塩漬け”状態になってしまうケースも少なくありません。
また、今ご説明したとおり、実際に住んでいない不動産でも所有しているだけで固有資産税を支払う義務が発生してしまいます。
相続した不動産に今後住む可能性がない場合は、そのまま所有し続けるよりも売却した方が経済的負担を抑えられる可能性が高いです。
不動産の売却を考えている方は、特に相続税はしっかり納めておく必要があります。
それは売却の際の手間が削減できるだけでなく、相続税を支払うことによって不動産を売却した際の譲渡税が減額されるためです。
相続税を支払った分不動産売却後に払う譲渡税が減る
不動産を売却する際、通常譲渡税といわれる税金が発生します。
不動産を売却することによって生じる所得は譲渡所得といわれ、譲渡所得に対して「所得税」「住民税」といったいわゆる譲渡税が発生するのです。
不動産を売却する際に相続税をしっかり支払っていれば、この譲渡税を減らすことが出来ます。この仕組みのことを「所得費加算の特例」といいます。
所得費加算の特例が適用された場合、不動産を売ったときに得られる譲渡所得を計算する際に、支払った相続税の一部を「所得費」に加算し譲渡所得の金額を軽減することが出来ます。
「所得費」とは、不動産を購入した当時の金額のことです。
所得費に相続税を加算することによって譲渡所得金額が減り、譲渡所得金額が減ることによって譲渡税も減額されるという仕組みです。
この「所得費加算の特例」を受けるためには、以下の条件を満たしている必要があります。
- 相続、または遺贈によって取得した財産である
- 相続した際に、相続税が課税され、納税している
- 相続開始の翌日から3年10か月以内に譲渡している
「所得費加算の特例」の対象となるためには、相続税をしっかり納めていることが条件となります。
不動産の売却を考えている場合、相続税を納税することで結果的に節税することが出来るんです。
相続税を払う場合は誰に依頼する?
この記事では、不動産の相続の流れや納付する税金、相続税を支払わないことによるデメリットについてご説明しました。
最後に、記事の内容をおさらいしましょう。
- 相続には「法定相続」と「指定相続」の2パターンがある
- 「法定相続」などで相続人が複数いる場合は「遺産分割協議」を行う必要がある
- 不動産を相続したら、「相続登記」を行わなければならない
- 「相続登記」を行わずに相続した不動産を放置すると、評価額が下がったり、管理費が嵩んだりといったデメリットが多く発生する
不動産を売却するなら場合、相続税はしっかり払っておいた方が後々お得になるという事がわかりましたね。
相続税を払っておいた方がいいということはわかりましたが、遺産分割の手続きを行う際に面倒な手続きはどこに依頼したらいいの?といった疑問があるかと思います。
多くの方が行政書士、司法書士、弁護士といった士業の方へご相談をされています。
それぞれ手続きを行える範囲が決まっていますが、基本的には士業の方同士で連携をしていることが多いです。
相続される財産によって手続きが異なりますので、内容や費用面などをご確認のうえ、誰に相談するのか選択されてください。
相続に関するご相談から、査定、不動産の売却まで、相続の流れを一貫してサポートいたしますので、ご安心ください。
不動産の相続でお困りの方は、先ずはお気軽にご相談を。
(関連記事:『相続税の支払い』延滞料がかかる!?支払えない場合のペナルティとは』)
記事監修者 かながわ行政書士事務所 代表 池田 晴香
行政書士
かながわ行政書士事務所ホームページ:https://kanagawa-gyosei.com/
WEB制作会社に営業として勤務後、学生時代から就職後も続けていた音楽関係の仕事をきっかけに
ラジオパーソナリティー、ナレーション、朗読などの声の仕事を始める。 30代、行政書士の仕事をスタート。
→センチュリー21アイワハウスの編集ポリシー