空き家を放置しておくと損をする?空き家問題とその対応について不動産のプロが教えます
社会問題化している日本中の空き家。空き家には今後多額の税金がかかる可能性があります。
今回は、空き家を放置しておくとどうなるのか、そして空き家を持っている場合、どう対処するべきなのかをお伝えします。
【目次】
何かと危険な空き家問題
日本では全国各地で空き家が増加しています。ではなぜ空き家は増えてしまうのでしょうか?
その理由を確認していきましょう。
何故こんなに空き家が増えているのか
2013年に総務省が発表したデータによると、全国の空き家の数は約820万戸。全住宅数に対する空き家の割合は13.5%とされています。この割合は、1998年の調査では11.5%、2003年では12.2%、2008年では13.1%と、年々確実に増加していることが分かりますね。
空き家が増えている原因はいくつか考えられますが、主な理由としては以下の3つが代表的です。
1.少子高齢化と核家族化
子供が独立して新たに家を構えた後に親が亡くなった場合、それまで親が住んでいた実家が空き家となってしまうことがあります。家を相続したけれど、住む人がおらず空き家となってしまうケースです。
2.需給バランスの崩壊
首都圏等では新築物件の供給が多く、世帯数を上回る新築物件が供給されています。そのため、そもそも当初から入居者が見つからずに空き家となっている物件や、新築物件に需要が集中し、建築年が古い中古物件については居住者が見つからずに空き家となってしまうことがあります。
3.経済的な事情
居住者がいなくなった場合でも、戸建てを解体するには相応の費用がかかります。また、戸建ての建物を取り壊して更地にしてしまうと、土地の固定資産税が高くなる為、空き家が建ったままにしていた方が節税になるという事情が考えられます。
空き家は放置してはいけない?固定資産税が急増する可能性
景観や衛生上の問題が大きな空き家ですが、所有者にとっては固定資産税が課税される、金銭的リスクも有るのをご存知ですか?
住宅用地として居住用に利用されている土地の固定資産税については、その課税標準額が通常の1/6(200㎡を超えるときは1/3)となる軽減措置を受けられます。
これが空き家となっても、建物を取り壊さずに放置しておく理由のひとつであることは、先ほど述べたとおりですね。
しかし、「空き家等対策の推進に関する特別措置法※以下、空き家等対策特別措置法」の「特定空き家等」については、固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外されます。
単純に税金が6倍となる訳ではありませんが、固定資産税が上がってしまうので注意が必要です。
現行制度では、課税標準額は以下の通り算定されます。
・住宅用地で1戸につき200㎡以下の土地(小規模住宅用地):課税標準額×1/6
・住宅用地で1戸につき200㎡を肥える土地(一般住宅用地):課税標準額×1/3
もしも、あなたが所有している空き家が「特定空き家」と認定された場合には、「住宅用地の特例」が適用されず、通常の課税標準額に固定資産税率を乗じた額として算出されることになる為、固定資産税が増額されることになります。
特に危険視される「特定空き家」とは
市町村による強力な措置が講じられる「特定空き家等」とはどのようなものでしょうか?
「特定空き家等」とは、空き家等対策特別措置法第2条第2項が定義を定めており、以下のいずれかに該当するものです。
(本文に対する出典: e-Govポータル「空家等対策の推進に関する特別措置法」)
1.そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 建物が著しく傾斜していたり、構造耐力上主要な部分が損傷していることにより、倒壊の恐れがある場合
- 屋根、外壁等が脱落、飛散する恐れがある場合
- 障壁が老朽化して表面に水が染み出たり、流出している場合
2.著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 建物または設備等の破損が原因で石綿等が飛散し暴露する可能性が高い状態、浄化槽の破損等により汚物等の流出・排水の流出等による臭気によって地域住民の日常生活に支障を及ぼしている場合
- ゴミの放置、不法投棄によって臭気の発生、ネズミ・ハエ・害虫の発生等により周辺住民の日常生活に影響を及ぼしている場合
3.適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
- 景観法に基づく景観計画に著しく適合していない状態になっている場合や、地域で定められた景観保全にかかるルールに著しく適合しない状態となっている場合
- 屋根、外壁等が汚物や落書き等によって外見上大きく傷んだり汚れたままになっている場合
- 多数の窓ガラスが割れたまま放置されている場合
- 立木等が建築物の全面を覆う程度まで繁茂している場合
4.その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
- 立木等の枝が道路などにはみ出していて歩行者などの通行を妨げている場合
- 空き家等に住み着いた動物などの糞尿、汚物等を原因とする臭気によって地域住民の日常生活に支障を及ぼしている場合
- 門扉が施錠されていない、窓ガラスが割れているなど、不特定のものが容易に侵入できる状態で放置されている場合
特定空き家を放置することによる問題点
上記のような特定空き家等が放置された場合にはさまざまな問題点が出てきます。
例えば、
1.老朽化や自然災害による建物の倒壊
建物の老朽化による倒壊、台風などの自然災害の際に建物の一部が吹き飛ばされるなどによって、人的被害を生じさせたり、周辺の建物などに損害を与える危険が生じます。
2.放火・火災の危険性
建物自体が適切に管理されていない場合には放火などの対象となったり、また、浮浪者などが住み着いて内部で火を使うことにより火災が発生するなどの危険が生じます。
又、不法投棄されたゴミなどを原因とする自然発火による火災の危険も否定できません。
3.不審者の侵入や犯罪に利用される
施錠されていない状態の空き家に不審者が住み着いたり、不良などのたまり場になったり、犯罪者がそこで犯罪行為を行うなどといったリスクが生じます。
またそれによる地域の治安自体の悪化という問題も引き起こす可能性があります。
4.ごみの不法投棄
ゴミの不法投棄による悪臭、害虫などの発生により、衛生環境の悪化を引き起こす可能性があります。
5.放置することにより景観や衛生面が損なわれる
空き家を放置することにより建物自体の朽廃によって幽霊屋敷化が進行するなどして地域の景観を悪化させ、当該地域自体の治安の悪化をもたらしたり、衛生面を含めた地域環境の悪化を招く危険があります。
このような事象により当該地域自体の治安の悪化や、現実的な被害やトラブルが発生する可能性があることから、空き家問題に対して適切な対応をとれるよう「空き家等対策特別措置法」が定められたのです。
空き家問題を解決する為に設けられた「空き家対策特別措置法」とは
先ほど説明した空き家問題に対応すべく、平成26年に空き家等対策の推進に関する特別措置法(空き家等対策特別措置法)が制定され、平成27年2月26日に施行されました。
この法律は、適切な管理が行われていない空き家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしていることに鑑みて、地域住民の生命、身体又は財産を保護するとともに、その生活環境の保全を図り、あわせて空き家等の活用を促進する(空き家等対策特別措置法第1条)ことを目的としています。
では、空き家等対策特別措置法とはどういった内容でしょうか?
1.空き家等についての情報収集
具体的には、市町村長は空き家等と認められる場所に立入調査を行ったり(空き家等対策特別措置法第9条)、当該空き家等の固定資産税情報等を利用して、所有者を特定する為の調査を行うことができるとしています(空き家等対策特別措置法第10条)。
2.空き家所有者への空き家等の適切な管理の促進
市町村は、空き家等の適切な管理を促進する為に、その所有者等に対して、情報の提供や助言その他の援助を行うように努めるべきとしています(空き家等対策特別措置法第12条)。
3.空き家等の跡地の活用の促進
市町村は空き家等及び空き家等の跡地に関する情報の提供などを行って、その活用の為に必要な対策を講じるように努めるものとしています(空き家等対策特別措置法第13条)。
4.特定空き家等に対する措置
一定の条件に該当する空き家等を「特定空き家等」として、その除却、修繕、立木竹の伐採等の措置を助言・指導し、また勧告、命令、代執行等をすることができることとしています(空き家等対策特別措置法第14条)。
空き家を放置していると、市町村からの調査が入り、警告されることもあるというわけですね。
空き家はどうしたらいい?話題の「空き家対策」とは
空き家を放置しておくと、様々な問題の原因になるばかりでなく、固定資産税の軽減措置を受けられなくなる等の不利益も生じることがお分かりいただけたと思います。
もし、空き家を所有している場合には、課税されないための対応が必要です。
ここからは、空き家の持っている場合はどうしたらいいのか、その対応策を見ていきましょう。
空き家の活用方とは
自治体などでも空き家を活用しようといういくつかの動きがあります。
空き家バンク
空き家の最も好ましい利用方法とは、空き家に誰かが入居して生活することです。それによって、空き家が減少するのはもちろんですが、住民が増加し消費活動が行われることによって、経済の活性化も期待できるからです。
そのような観点から、地方公共団体が当該地区の空き家所有者の申し込みによって空き家を登録し、これを空き家を探している人に紹介するという、「空き家バンク」という制度が設けられています。
いわゆる空き家のマッチングサイトと言われるものです。
通常の不動産屋等が運営する物件紹介サイト等と異なるのは、市町村が運営していることから、営利を目的としていないということです。
つまり、空き家所有者が直接市町村の空き家バンクに登録をし、その登録内容を見て興味を持った人が直接登録者に対して売買契約の締結や賃貸借契約の締結を申し込む形になります。
空き家バンクは上述の通り、「定住促進による地域の活性化」をはかることなどを目的としていることから、その利用者に対して各種の補助などを設けている地町村もあります。
(関連記事:空き家の相続問題 有効活用の方法とは)
空き家の維持
空き家を適切な状態で維持できれば、問題も発生しにくくなります。
空き家問題の重要なポイントは、空き家が適切に管理されないことによってその老朽化やジャングル化が進む、衛生上の問題が生じる、治安の悪化を生じさせることです。
これらを避ける為には、たとえ人が居住していないとしても、適切に管理されていることが必要です。
もしも空き家が適切に管理されていれば、特定空き家等に認定されることはありません。
空き家管理サービス
そこで今注目を集めているのが空き家管理サービスです。
現在では、ハウスメーカーや不動産の仲介会社をはじめとする各種の企業が、この分野に参入してきています。
具体的な管理業務の内容についても、定期的な見回り、点検、通風・換気、簡易清掃、草木・樹木の管理、等様々なメニューが設けられているようです。
空き家を所有しているが、思い出があって売却や処分等はしたくないという方にとっては、有効な選択肢になるでしょう。
空き家の処分
相続などで不動産を取得したが、管理が難しい、手間をかけたくないという方は、処分するのも方法のひとつです。
不動産買取依頼
空き家についての最終的な対応方法としては、空き家を売却することでしょう。
ただ、空き家が売れるのかどうかという問題があります。
空き家を買いたいという人に対して直接売却できれば、いわゆる市場価格で売却することが可能ですが、古住宅に対する需要は低いのが現実です。
そのような場合には、売却ではなく不動産業者に買取依頼することが可能です。
すべての不動産会社が空き家の買取に応じてくれとは限りませんが開発等に力を入れている業者や、空き家の売却に強みを持っている業者によっては、空き家等の訳あり物件でも買い取ってくれます
親からの相続により不動産を取得したけれど、空き家のまま管理を怠ってしまう。その結果として老朽化、自然災害、事件、事故などが起きた場合には物件が売りづらくなってしまいます。
決断が早ければ直ぐに売れたのに……といったケースも多く存在しています。
無料査定などを上手に活用して、不動産買取をご検討されるのもひとつの方法です。
(関連記事:固定資産税などの税金は負担になる。空き家の税金を滞納したらどうなるの?)
(関連記事:【空き家の売却】相続した空き家を売る方法をご紹介!)
記事監修者 かながわ行政書士事務所 代表 池田 晴香
行政書士
かながわ行政書士事務所ホームページ:https://kanagawa-gyosei.com/
WEB制作会社に営業として勤務後、学生時代から就職後も続けていた音楽関係の仕事をきっかけに
ラジオパーソナリティー、ナレーション、朗読などの声の仕事を始める。 30代、行政書士の仕事をスタート。
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