『老後の2000万円問題』持ち家?賃貸?住居について考えてみる
老後と言えば安心して住み続けられる住宅の確保も大切になってきますので、本章では老後の2000万円問題を住居と絡めて考えてみたいと思います。
【目次】
終身雇用、年功序列といった日本型雇用システムは完全崩壊まではしていないものの、今は安心して現役世代を終えることは確約されない時代です。
不確実性が強まる現代において、お金の心配は尽きることはないでしょう。
昨年2019年には「老後の2000万円問題」が降ってわきましたが、かなり沸騰したワードですので覚えておられる方も多いと思います。
そもそも老後の2000万円問題とは?
この問題は金融庁の金融審査会がまとめた報告書が発端になったもので、簡単に言うと、「皆さんは老後の生活資金が2000万円たりなくなる予想ですから、備えを考えておいてくださいね」というものです。
不足するとされる金額が大きいことから、社会不安をあおるような形でセンセーショナルに報道されたことも手伝い、中高齢者だけでなく若年者の方にも不安を与えることとなりました。
ただ、誰もが必ずこの金額分不足するわけではありません。
この試算はモデルが存在するので、モデルよりも収入が大きい、もしくは出費が少なければそれほど慌てることは無いのです。
試算に使われたモデルは、年金暮らしの無職の夫婦世帯で、月額21万円の年金で30年ほど暮らすというものです。
消費面は月に26万4千円の出費を想定しているので、一か月あたり5万4千円の不足が出ます。
この不足分を30年分として計算すると約2000万円ということになり、この金額を賄うために貯蓄を取り崩す必要があるということです。
持ち家か賃貸かによって大きく変わる
2,000万円問題での住居費は13,656円となっており、収支モデルでは持ち家や賃貸住宅などの平均値となっているため、住宅費用に関しては世帯によって大きく変動があると言えます。
・持ち家の場合
持ち家の場合は、住宅ローンが完済されていれば毎月の支払いはなくなりますが、住宅ローンの残債がある場合には当然その支払いがありますので住宅費は高くなります。
完済している場合でも老朽化が進んでいる場合には、設備の修理や交換、外壁の塗装などのメンテナンス、状況によっては建て替えなどの費用も必要となることがあります。
住居だけでなく、人間も加齢してきますから健康状態が悪くなる可能性があります。
その場合、室内のバリアフリー化も検討しなければならないかもしれません。
リフォームの内容にもよりますが、全体的に修繕しようとすると1,000万円を超える費用がかかることがあります。
また、持ち家が分譲マンションの場合には住宅ローンを完済していたとしても管理費、修繕積立金は毎月支払わなければなりません。
・賃貸の場合
賃貸住宅ではいくら高額な賃料を払い続けていても自分のものにはなりません。
仮に10万円の賃料を払い続けていた場合、20年経過すると2,400万円もの費用となります。
持ち家には毎年固定資産税が課税されますが、賃貸では2年に一度の更新がある物件が多く、その際に更新料の支払いが発生してきます。
更新時は更新料と毎月の賃料の支払いが重なるので注意が必要です。
貯蓄があれば慌てる必要はない
多くの人は、「貯蓄をしてるのにそれでも不足するのか!?」と受け取ったので恐怖を感じたと思いますが、そうではなく、貯蓄の無い人は対策が必要という意味の報告書だったわけです。
収入と支出を各ご家庭に当てはめて、不足分がいくらになるのか試算してみましょう。
もし不足が出たとしても、老後はそもそも貯蓄を取り崩して生活することが当然と言えば当然ですから、貯蓄額が十分にあれば慌てる必要はありません。
貯蓄を取り崩したくないのであれば、支出を減らすか収入を増やすかを考えることになります。
自宅があれば安心が強まる
マイホームをすでに購入している方はこれを資産として活用することができますから、生活費が不足しないとしても、さらに安心を高めることができます。
もし老後の生活資金が足りなくなった時でも、自宅不動産があればリバースモーゲージという方法を使って資金調達ができます。
自宅の所有権自体は手放さずに、担保に出すことで生活資金の融資を受けることができるものです。
自分が死亡するまでは自宅に住み続けることができ、死亡した時点で抵当不動産により清算します。
最近はマンションも対象にできることがあるので、生活資金が不足した時に自宅不動産は大きな力になります。
賃貸住まいの人はリバースモーゲージは利用できないので、老後の生活について安心を得たいのであれば、あらかじめ現預金など流動資産の確保や投資を考える必要があります。
各世帯によって必要となる資金に違いがある
前述の通り、住宅費だけを例にとって見ると世帯によって老後に必要となる資金には違いが出てきます。
2,000万円問題を考える場合には簡単にシミュレーションをして老後に必要な資金を計算してみましょう。
現在と同様な生活水準を保てるか、また生活水準を保つためにはどのくらいの資金が必要かを想定することでそこに向かう意識が出来てきます。
長生きリスクへの対処
ところで、先に出た金融庁の試算では現役引退から30年間生きるという前提でした。
大体90歳から95歳程度まで生きるということが前提になりますが、自分が何歳まで生きるのかなど誰にも分かりません。
貯蓄の切り崩しで生活する前提とすれば、長生きするほど生活費が枯渇するリスクが高まるということになります。
長生きリスクに備えるには、高齢になっても働けるうちは働き、できるだけの貯蓄を形成するという意識を持つことが大切になります。
特にマイホームを所有しない賃貸住まい路線の方が頼れるものは流動資産ですので、可能な限り「引退」を先延ばしするようにライフプランを考える必要があります。
(関連記事:『マンション投資のリスクとは?対策についてもご紹介』)
記事監修者 かながわ行政書士事務所 代表 池田 晴香
行政書士
かながわ行政書士事務所ホームページ:https://kanagawa-gyosei.com/
WEB制作会社に営業として勤務後、学生時代から就職後も続けていた音楽関係の仕事をきっかけに
ラジオパーソナリティー、ナレーション、朗読などの声の仕事を始める。 30代、行政書士の仕事をスタート。
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