事前に知ってトラブルを防ごう! 不動産売買の流れと注意点
不動産を売りたい!けれども高額な取引になる上、法律も関わってくるのでなかなか勇気が出ない……
しかし、事前に不動産の売買の流れを把握し、起こりうる問題を把握しておけば、決して難しい話ではありません。
マンションを売りたくて悩んでいる、物件を売りたいけれど時間がかかって大変そうに感じる… そんな方は前回の記事もご参考ください!
実際に不動産を売るには、どのような手順でどれくらいの時間がかかるものなのか、また注意すべき点は何なのか、ここを押さえておけば大丈夫!
不動産売買の流れについて、不動産のプロが「売却」と「買取」の2つの方法に分けて解説していきます。
不動産を売るには2種類ある!売却と買取の違いについて
不動産を売るという行為は「売却」と「買取」の2種類に分かれます。
売却とは、物件を売りたい人が、不動産業者に依頼して買い手を探してもらい、物件を売ることです。
不動産業者の間では「仲介」とも言います。
買取とは、物件を売りたい人が、直接不動産業者に物件を売ることです。
この2つの売却方法には決定的な4つの違いがあり、それぞれメリットデメリットがあります。
売却と買取、それぞれの流れと注意事項
売主にとっては同じ不動産を「売る」という行為でも、売却と買取では当事者の人数や、結ぶ契約の種類の数が変わってきます。
売却と買取の流れの違いを表した表
売却の流れ | 買取の流れ |
---|---|
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当事者 売主・不動産仲介業者・買い手 | 当事者 売主・不動産業者 |
売却の流れ
売却は売主、不動産業者、買い手の3者間で行う売買方式なので、手順もそれだけ多くなってくるのが特徴。
相場の確認
物件の相場をあらかじめ調べておくことにはいくつかメリットがあります。
物件相場を事前に調べるメリット1:資産運用の計画も立てやすくなる
あらかじめいくらくらいで自分の物件が売れるか分かっていれば、将来の計画も立てやすくなります。
物件相場を事前に調べるメリット2:利用する不動産業者が信用に足るか見定める指標になる
高い査定額が出たら、売主としては嬉しい限りですが、買い手は相場を逸脱した価格で物件を買おうとは思いません。
結局長い間売れず、値下げをする羽目になった、なんてこともあり得るのです。
プロが教える!豆知識
不動産業者も他社と争っているので、質の良いサービスよりも、まずは契約をとろうと、高い査定額を出している可能性もあります。
つられてしまわない為にも、事前にしっかり相場を調べておきましょう。
物件価格の相場を調べるのに役立つWebサイト
以下のようなWebサイトで、日本全国の物件価格を調べることができるので、自分の物件の築年数、大きさ、立地条件を踏まえ、自分の物件がいくらくらいで売れるか、予想を立てておきましょう。
- レインズマーケットインフォメーション
不動産流通機構が、実際行われた売買から、おおよその情報を公開しているサイトです。
レインズマーケットインフォメーションはこちら
- 土地情報総合システム
国土交通省が、アンケートを元にした売買価格の情報を公開しているサイトです。
土地情報総合システムはこちら
売却の相談、物件調査、価格査定
相場が分かったら、不動産業者に相談しに行きましょう。
売却の段取りの説明や、実際に物件を見て物件に問題がないかを見てもらい、その上で価格査定をしてもらいます。
物件調査は後々のトラブル回避のためにも徹底して行う
物件の本当の価値というのは、築年数や立地などの条件以外にも、様々なものに左右されます。
- 日当たり
- 老朽具合
- 騒音、公害の有無
- 害虫の有無
こういった事も価値を定めるひとつの指標となってきます。
例えばここでシロアリが見つかり、柱の木材などが虫食いにあっていたら、大幅な改修工事が必用になってきます。
売却の場合、売主は買い手に対し、物件に不備があった場合は責任をとる必要が出てきます。
未然にトラブルを防ぐためにも、徹底した物件調査を依頼しましょう。
媒介契約の締結
不動産業者が査定額を提示したら、その業者と媒介契約を結ぶか否かを決めましょう。
媒介契約とは
仲介手数料はいくらかかって、何か問題が起こった時はどこまで対処してくれるのか、他の業者と併用してもいいのか、などの様々な約束事を取り決めたものです。
不動産業者による広報活動・交渉
売主はここですることは特になく、不動産業者が仲介業としての本領を発揮する部分です。
不動産業者は業界特有のネットワークを駆使し、広報活動を行い、希望者がいれば内覧を行い、買い手を見つけます。
買い手側が希望購入価格を提示した場合は売主と買い手の間に立ち、要望と擦り合わせ、交渉を行います。
売買契約
価格交渉が済んだら、売主と買い手の間で売買契約を交わします。
売買契約とは
物件の価格、決済の日取り、売主の責任の範囲、固定資産税に関する取り決め などが定めてあります。
売主の責任の範囲については、物件売却後に問題が発生した際に売主が負うべき契約不適合責任についても言及してあります。
契約不適合責任については2020年4月の民法改正。「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へで詳しく紹介しています。
固定資産税は売主が払う
毎年1月1日に物件を所有している人には固定資産税の支払い義務が発生します。年の半ばに物件を売却し、半年間しか物件を所有していなかったとしても、売主側が1年分を納税しなければなりません。
これでは不公正なので、買い手は物件購入時に、固定資産税を日割り計算した精算分を、物件価格に乗せて清算することになっています。
ただ、売買契約の内容にもよるので、契約書は念入りに確認しましょう。
売買契約には印紙税がかかる
大きな額の契約には、印紙税がつきます。一般的な住宅の売買であれば、1万~3万はかかるものだと覚えておいて下さい。
代金授受、物件引き渡し
物件の売却で当事者にとって一番重要な日が決済日です。
売主も買い手も、決済日までにやること、決済日にやることは目白押し。細かく見ていきましょう。
決済日に関して行うことは以下の通りです。
決済日までに行うこと
- (売主)未了の場合、抵当権抹消手続き
- (売主・買い手)不動産業者への仲介手数料支払い
- (買い手)ローンを組む場合、金融機関へのローンの申込
- (買い手)物件の代金、その他の費用の振り込み
決済日当日に行うこと
- (司法書士+当事者全員)物件の引き渡し=所有権移転登記手続き
- (司法書士+売主)売主がローン返済未了の場合、抵当権抹消手続き
「抵当権抹消手続きって何?」
「所有権移転登記手続きって?」
と、いくつか見慣れない単語がでてきたかもしれません。1つ1つ解説していきます。
物件の引き渡し=所有権移転登記
物件の引き渡しというのは、ただ家の鍵を渡して終わりというわけではありません。
厳密には所有権移転登記の手続きのことで、物件の所有権が売主から買い手に移った旨を登記簿に登録することを指します。
所有権移転登記は司法書士の立ち合いのもと行う必要があり、また、住宅ローンが絡んでくる場合は、金融機関も立ち会います。
住宅ローンを組むと、銀行が抵当権者として登記簿に登録される
「抵当権」は住宅ローンを組む時にでてくる単語ですが、組まない方も重要な事項なのできっちりとおさえておきましょう。
抵当権とは
物件購入のために、住宅ローンを組んだとします。銀行は、お金を借りた人=債務者が期日までにお金を返せなくなった時のために、債務者が購入した家を担保に入れ、債務者が破産した場合はその家を資産として回収して、競売にかけて現金化することで借金を回収します。
お金を貸す側のこの権利を抵当権といい、抵当権を持つ人を抵当権者と言います。
抵当権がつく場合、その旨を登記簿に記す必要があります。
厄介なのは、住宅ローンを返し終わっていても、銀行は何もしてはくれないということ。返済した人が自分で法務局に行き、銀行の抵当権が抹消したことを申告しなければなりません。
もし売主が、過去にローンを組んでこの物件を手に入れ、そのローンは完済していたのに、抵当権抹消手続きを行っていなかった場合は、決済日までにその手続きを行わなければなりません。
もし売主が、過去のローンを完済していなかった場合は、買い手から受け取った代金を使ってローンを完済し、決済日当日に所有権移転登記と共に抵当権抹消手続きを行います。
買い手もローンを組む場合は、所有権移転登記の際に抵当権がつくことを追記します。
譲渡税など、各税の納付
売った!終わった!で済まないのが不動産。売却後も各税の納付が待っています。
中でも注意すべきは譲渡所得税。こちらは分離課税なので確定申告が必用です。
プロが教える!豆知識
物件の保有期間が5年以内であれば短期譲渡所得税、5年以上であれば長期所得税となります。
短期の方が税率が高いので、あらかじめ保有期間を考えて決済日を決めると良いでしょう。
このように、売却には売主と不動産業者で結ぶ「媒介契約」、売主と買い手で結ぶ「売買契約」が必要であり、更に買い手と金融機関で結ぶ「ローン契約」を含めると、3つの契約が含まれます。各種手続きを済ませるのに時間がかかるため、最短でも2ヵ月は必要となってしまいます。
買取の流れ
買取は売主と不動産業者の2者で行われる売買方式で、手順もそれだけシンプルです。
相場の確認
売却と同様、不動産業者に行く前に相場を確認しましょう。
買取の場合、不動産業者はリノベーションをして再販することを念頭に置いているため、提示される額は相場より低いことがあります。
相談、物件調査、価格査定
ここでいう相談は、売却の場合の相談とは少し異なり、買い手に直接相談しに行くイメージです。
不動産業者は自身で買い取る物件を調査することになります。
売買契約
買取の場合、不動産業者が直接買い手として売買契約をするため、媒介契約を結ぶ必要はなく、仲介手数料も発生しません。
内容は基本的に売却の際と同じで、物件の価格、決済の日取り、売主の責任の範囲、固定資産税に関する取り決め などが定めてありますが、売主は契約不適合責任について問われることはありません。
代金授受、物件引き渡し
売主は売却同様、決済日までに抵当権抹消手続きを行います。書類さえ揃えばあとは簡単です。
売却のように買い手が個人の場合はローン審査に時間がかかってしまうのですが、業者が物件を購入する場合現金決済であることが多く、すぐに売り手の口座に代金が振り込まれます。
決済日当日は、売主、不動産業者、司法書士が立ち合い、物件の引き渡しが行われます。
譲渡税の納付
売却の時と変わらず支払い義務が発生します。
このように、買取の流れはとてもシンプルで、売買契約しか発生しません。
関わる人が不動産のプロのみで、揃える書類も少なければ時間も短く、最短1日で不動産の売買が完了します。
売却と買取、自分に合った物件の売却方法を選ぶには
売却と買取のそれぞれの流れを見てきました。
同じように不動産を売るにしても流れが随分と違うことが分かりましたね。
POINT!不動産を売るにあたって事前に調べておくこと
不動産を売るにあたって、売却買取のどちらにせよ、以下の項目は事前に調べておくほうが無難です。
- 自分が物件を買った時のローンは返済済みか
- 抵当権抹消手続きは済んでいるのか否か
- 決済日までの物件の保有期間はどれくらいになり、譲渡税は長期になるのか短期になるのか
そこから更に、売却の場合だと、売却後物件に問題があった際に、どれくらい責任をとらなければならないのかを注意深く契約を結ばなければなりません。
POINT!売却と買取ではかかる時間と結ぶ契約の数が違う
売却は、媒介契約を結んだあと買い手が見つかるまで待つ必要があり、売買契約の後は買い手のローン契約を待つ必要があります。
買取だと売買契約のみが発生し、不動産業者に相談しにいくところから代金の支払いまでスピーディーに行われます。
じっくりかけて高く売る売却を選ぶか、手間暇かけずにすぐ売る買取を選ぶか。
後悔のないよう、ご自分の希望に合った売却方法を選びましょう。
記事監修者 かながわ行政書士事務所 代表 池田 晴香
行政書士
かながわ行政書士事務所ホームページ:https://kanagawa-gyosei.com/
WEB制作会社に営業として勤務後、学生時代から就職後も続けていた音楽関係の仕事をきっかけに
ラジオパーソナリティー、ナレーション、朗読などの声の仕事を始める。 30代、行政書士の仕事をスタート。
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