入居者の家賃滞納・家賃支援給付金の終了で賃貸経営にリスクが生じる
コロナの影響で売り上げが減った事業者に対しては政府がいくつかの支援策を打ち出していますが、これらは期限付きの施策であり、必ずしも必要十分な期間実施されているとは言い難い現状があります。
【目次】
本章では支援策のうち家賃支援給付金が終了したことによる不動産経営面のリスクと、考えられる対処法などを見ていきます。
家賃支援給付金とは?
家賃支援給付金制度は、ビジネスでオフィスや店舗を借りている事業者がコロナの影響で売り上げが落ち、家賃の支払いに窮した時に利用できるものです。
直接の利用者は当該ビジネスを行っている事業者であり、不動産の貸し主が申請するものではありませんが、給付されるお金の行く先は結局のところ大家さんですので、賃貸物件オーナーの経営を助ける制度としても捉えることができます。
ビジネスオーナーと不動産オーナーの両方を助けられる施策でしたが、残念ながら2021年1月15日で原則の申請期間が終了し、特別の事情がある場合の救済期間も2021年2月15日まで延長されたのちに終了となりました。
大家さんに生じるリスクと対処法
本支援策の終了により、大家さん側には家賃の滞納リスクが生じます。コロナの影響は現在も悪い方に拡大している状況ですので、ビジネスの不調による家賃の未払いリスクも増大することになります。
賃貸契約は債務不履行による解除も可能ですが、実際には信頼関係破綻の法理が働いて、3ヶ月以上の家賃滞納が無ければ大家さんサイドからの契約解除ができません。
3ヶ月分の家賃収入がなくなることは大きな痛手ですからその穴埋めが必要ですが、まずは敷金を滞納分に充当することが考えられるでしょう。それでも足りないことが多いと思いますが、何も無いよりマシです。
連帯保証人が付いていればこちらからの回収を目指すこともできますが、相手もできるだけ拒否しようとするでしょうから、場合によっては法的措置をとるための時間が必要になります。保証会社を利用していれば個人の保証人よりは実効性が持てるものの、代位弁済の期限設定によっては支払いが長引くこともあります。
一般居住用向けの施策はまだ継続している
事業用ではなく、居住用不動産の家賃にかかる支援策はまだ終了していないので、アパートなどの大家さんはこちらに期待が持てます。
住宅確保給付金制度は3か月間の再支給の申請期間が令和3年9月末日まで延長されているので、家賃の支払いに窮している賃借人がいたら利用を促してみましょう。本制度は賃借人が自治体に申請することで、大家さんに直に給付金が支払われる仕組みになっています。
本制度を利用するには世帯収入や預貯金の額などで要件を満たす必要があります。
住宅確保給付金の申請に必要な書類
住宅確保給付金の利用をする場合の主な書類をご紹介いたします。
本人確認書類・・・運転免許証、個人番号カード(マイナンバーカード表面)、パスポート、各種福祉手帳、健康保険証、住民票、戸籍謄本等の写し等。
収入が確認できる書類・・・申請者・世帯の方の給与明細、年金等の公的給付金の証明書等。
預貯金額が確認できる書類・・・申請をする方及び同居されている親族等の金融機関の通帳の写し。
離職・廃業や就労日数・就労機会の減少が確認できる書類・・・
[離職・廃業後2年以内の場合] 離職票や離職証明書、廃業届等。
[個人の責任・都合によらず給与等を得る機会が、離職・廃業と同程度まで減少している場合] 勤務日数や勤務時間の減少が確認できるシフト表等。
(参考:厚生労働省「住居確保給付金 手続きの流れ」)
住宅確保給付金の相談窓口は以下で確認できます。
厚生労働省:住居確保給付金 申請・相談窓口
大家さんが取るべきコロナ禍の対策
新型コロナウイルスが長期化し、業態によっては大打撃を被っています。業績が悪化したり倒産してしまう企業も少なくありません。政府の施策などによっては家賃滞納が増えてくることも想定されます。
対策としては現在空室となっている物件は大手法人は難しいでしょうが、個人事業主や個人が借りる際には保証会社を利用することで家賃の滞納を減らすことが出来ます。
個人での契約の際は連帯保証人を付けての契約もありますが、コロナ禍における状況によっては連帯保証人から家賃の支払いを受けられない可能性もあります。個人事情主が保証会社を利用する場合は必要書類が増える為、進捗が悪くなるケースもありますが、家賃の滞納の対策となるので検討してみても良いでしょう。
家賃滞納が多い場合には売却も視野に
多くの不動産を賃貸経営している場合は家賃が遅れても耐えることが出来るかも知れません。しかし、1つのみの物件で滞納されている場合やアパートなどの集合住宅でも滞納者が多い場合は収入が入ってこず、ローンを組んでいる際にはその支払いが出来ない可能性も出てきます。この場合は大家さん側に大きなリスクが生じてしまい、ローンの支払いが滞ることが続くと競売などで強制的に物件を手放さなくてはならなくなることもあります。
その為、支払いが厳しいと感じた際には売却を検討することも考えたほうが良いでしょう。また状況によってすぐに売らなければならない、現金化しなければならないというケースでは不動産の買取をしてもらうことですぐに物件を売却でき、現金化することが出来ます。
まとめ
コロナ禍ではさまざまな制度がありますが、期間が限定されているものも少なくなりません。今後の状況次第では家賃の滞納が増えることも否定は出来ません。
上手に制度を把握し、利用することで家賃滞納のリスクの対策を取ることが出来ますので賃貸経営をされている大家さんは積極的に制度を利用されてみてはいかがでしょうか。
記事監修者 かながわ行政書士事務所 代表 池田 晴香
行政書士
かながわ行政書士事務所ホームページ:https://kanagawa-gyosei.com/
WEB制作会社に営業として勤務後、学生時代から就職後も続けていた音楽関係の仕事をきっかけに
ラジオパーソナリティー、ナレーション、朗読などの声の仕事を始める。 30代、行政書士の仕事をスタート。
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