不動産の囲い込みとその罰則について
「不動産の囲い込み」という言葉を聞いたことがありますか?不動産業界に身を置く方であればご存知かもしれませんが、一般の方にはあまり馴染みがないかもしれません。しかし、不動産の売買を検討する際には、この「囲い込み」について知っておくことは非常に重要です。なぜなら、場合によっては売主・買主双方に不利益をもたらす可能性があるからです。
この記事では、不動産業界における「囲い込み」とは何か、なぜ問題視されているのか、そして2025年から強化される罰則について詳しく解説します。
不動産の囲い込みとは
不動産の「囲い込み」とは、不動産会社が売主から売却の依頼を受けた物件情報を、他の不動産会社に意図的に共有しない行為を指します。本来、不動産会社はレインズ(REINS)と呼ばれる不動産情報ネットワークシステムを通じて物件情報を共有し、広く買主を探すことが求められます。しかし、囲い込みが行われると、物件情報は自社のみで抱え込まれ、他の不動産会社からの問い合わせを断ったり、情報を開示しなかったりします。
囲い込みの目的と問題点
不動産会社が囲い込みを行う主な目的は、自社で売主と買主の両方と媒介契約を結び、両方から仲介手数料を得る「両手仲介」を狙うことです。両手仲介は、片手仲介に比べて手数料収入が倍になるため、不動産会社にとっては大きなメリットとなります。
しかし、囲い込みは売主と買主双方にとって以下のような不利益をもたらす可能性があります。
- 売主の不利益: 広く買主を探す機会が失われるため、物件がなかなか売れなかったり、本来得られたはずのより高い価格で売却する機会を逃したりする可能性があります。
- 買主の不利益: 物件情報が限られるため、希望に合った物件を見つける機会が狭まる可能性があります。
このように、囲い込みは市場の健全な取引を阻害する行為として問題視されています。
囲い込みは違法?
現状、囲い込み行為自体を直接罰する明確な法律はありません。宅地建物取引業法(宅建業法)にも、囲い込みを禁止する明文の規定はありません。しかし、囲い込みを行うために、以下のような行為が行われた場合は、宅建業法違反となる可能性があります。
- レインズへの登録を怠る: 専任媒介契約または専属専任媒介契約を締結した場合、不動産会社は一定期間内にレインズに物件情報を登録する義務があります。この登録を怠った場合は、宅建業法違反となります。
- 虚偽の情報を伝える: 他の不動産会社からの問い合わせに対し、「申し込みが入っている」「商談中である」など、虚偽の情報を伝えて取引を妨害した場合、宅建業法違反となる可能性があります。
2025年から強化される罰則
これまで、囲い込み行為に対する明確な罰則は存在しませんでしたが、2025年からは宅建業法の改正により、囲い込み行為に対する罰則が強化されます。
具体的には、国土交通省の通達改正により、囲い込み行為が確認された場合には、以下のような処分が科される可能性があります。
- 指示処分: 囲い込み行為が確認された場合、まずは是正の指示が行われます。
- 業務停止命令: 重大な違反や繰り返しの違反があった場合には、一定期間の業務停止命令が科されることがあります。
- 罰金: 高額の罰金が課されることもあり、違反の程度に応じて段階的に設定される見込みです。
- 免許取り消し: 特に悪質な場合や再犯の場合には、宅地建物取引業者免許の取り消しが行われることもあります。
囲い込みに遭わないための対策
不動産の売買を検討する際には、囲い込みに遭わないために以下の点に注意しましょう。
- 複数の不動産会社に相談する: 一つの不動産会社だけでなく、複数の不動産会社に査定を依頼し、意見を聞くことで、囲い込みのリスクを減らすことができます。
- 媒介契約の種類を理解する: 媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。それぞれの特徴を理解し、自身の状況に合った契約を選ぶことが重要です。特に、専任媒介契約または専属専任媒介契約を締結する際には、レインズへの登録が適切に行われているかを確認しましょう。
- 不動産会社の対応を注意深く観察する: 他の不動産会社からの問い合わせに対し、不自然に取引を妨害するような言動が見られる場合は、囲い込みを疑う必要があります。
まとめ
不動産の囲い込みは、売主・買主双方にとって不利益をもたらす可能性のある行為です。2025年からは罰則も強化されるため、今後はより一層適正な取引が行われることが期待されます。不動産の売買を検討する際には、この記事で解説した内容を参考に、囲い込みに遭わないように注意しましょう。